INTERVIEW スペシャル対談

ゼロサム創刊20周年記念!スペシャル対談 第2弾

おがきちか先生 × いそふらぼん肘樹先生

おがきちか先生

代表作

「Landreaall」 DXと仲間達の成長と冒険を描く、本格ファンタジー!

いそふらぼん肘樹先生

「神クズ☆アイドル」 クズアイドルに神降臨! アイドル☆コメディ

本日はよろしくお願いします!

こちらこそよろしくお願いします! 肘樹先生のファンなので『神クズ☆アイドル』を推す身として、Twitterでめちゃめちゃツイートさせていただいてます。

それを拝見して「おがき先生が『神クズ☆アイドル』の話をしてくださっている!!」と私も興奮しています(笑)。

毎月「今月も面白いなぁ」と思いながら読ませていただいています。

本当にありがたいです! 「私の漫画を読んでいただいているんだ…!」と嬉しくなります。それに、なかなか他の作家さんとやり取りできる機会がないんですよね。だから「ZERO-SUM」を読んで「今月も面白かったですとお伝えください!」と担当編集さんに託す感じで…。

このご時世なので難しいですよね…。

そうなんです。だからTwitterや、今回のような対談でおがき先生とお話しできる機会をいただけてありがたいです!

――直接お話しされるのは今回が初めてですか?

そうですね。Twitterでは何度かやり取りをさせていただいているのですが、直接お話しするのは初めてです。

「かつては作家さんが集まるパーティもあったんですよ」と担当編集さんから聞いて羨ましく思っていました(笑)。

実は今日、いそふらぼん先生に直接お伝えしたいことがあって…、『神クズ☆アイドル』のTVアニメ化おめでとうございます!

「神クズ☆アイドル」アニメ化が発表された「月刊コミックZERO-SUM 2022年1月号」巻頭カラー

ありがとうございます! 私も実は、この場でおがき先生にご相談したいことがありまして…。

何でしょう?

アニメのアフレコ現場で声優さんがキャラクターを演じてくださっているのですが、自分で考えた台詞が恥ずかしすぎて冷静に聞けないんですよ。おがき先生は『Landreaall』のドラマCDのアフレコを監修される際に、どうされていましたか?

いつの間にか慣れてしまいました。恥ずかしかった時期もありましたが、もう今では完全に仕事だと思うようにしています。

素晴らしいです…!

でも最初の頃は自分の中でもせめぎ合いはありましたよ。声優さんの演技に毎回感動しているのですが、一人で舞い上がるのも恥ずかしいので、顔に出ないように冷静な態度を取ったりして(笑)。

大人な対応ですね!

でもコロナの影響もあって、今はアフレコ現場に行くのも難しいですよね。

一度だけ運よく現場に行けたのですが、他は基本的にリモートで繋いでいただいてます。監督さんに「このシーンはどうでしたか?」と聞かれても「良かった気がしますぅ…」と毎回ふにゃふにゃしたことしか返せなくて。担当編集さんからも「おがき先生はしっかり監修されていますよ!」と喝を入れられて(笑)。

「こういう演技にしてほしい」といった監修は結構していますね。でも声優さんも慣れていらっしゃるし、監督さんにお任せすれば仕切ってくださるので大丈夫ですよ。

そうですよね!

作家さんにもよるかと思いますが、私の場合、メディアミックスは二次創作に近い物だと解釈しています。自分の作品とは少し違うというか、どちらかと言うと作品に対する監督さんの解釈が反映されている感じでしょうかね。

なるほど、たしかにそうですよね。私も監督さんからキャラクターの解釈を聞いて「へぇ、仁淀ユウヤってそういう人だったんだ!」と、不思議な感覚になっています。

そういう感じです!

ありがとうございます…! なかなか他の作家さんに聞く機会がなくて、誰に聞けば良いのかもわからないし…。

私もドラマCDが決まった時に、経験のある作家の友達に聞いたりしました。「どのくらい意見しても感じが悪くならないかな? 」とか(笑)。

私は「何を言っているんだ、この原作者」と思われたくなくて…。

わかります(笑)。でもドラマCDにしてもらったことで凄く勉強になりました。キャラクターの性格であったり、どのような話し方をするのかであったり、改めて考えることができたというか。

自分はそのキャラクターを作ったわけなので大体わかっているはずなのですが、でも「他の人がかみ砕くとこういう解釈になるんだ」と凄く新鮮です。

そうなんです。私は「原作者の指示通りにしても面白くなるとは限らない」と思っているので。

おがき先生は立派だなぁ。

本当に作家さんによるので、ご自身に合ったやり方でやっていただくのが一番良いと思います!

そうですよね、ありがとうございます!

――今回の対談は「ZERO-SUM」の創刊20周年の企画ですが、「ZERO-SUM」という雑誌にどのような印象をお持ちですか?

「Landreaall」が表紙を飾った創刊20周年記念号「月刊コミックZERO-SUM 2022年5月号」

私は「ZERO-SUM」の創刊半年目くらいから描かせていただいているので、お付き合いは長い方ですが、寛容な雑誌だと思います。20年前は新作のファンタジー漫画を採用してくれる雑誌が限られていたんですよね。さらに少女漫画となると「ZERO-SUM」くらいしかなくて…と言うと言い過ぎか (笑)。

たしかに寛容な雑誌ですよね。「ZERO-SUM」はファンタジー漫画をたくさん連載しているイメージでした。でも連載前に担当編集さんに聞いたら「「ZERO-SUM」は何でも載せる雑誌なので、他誌では掲載しにくい作品も載せているんですよ」と教えてもらった記憶があります。

そうなんですね。

だから担当編集さんに「何を描いても良いですよ」と言われたので、真に受けて『神クズ☆アイドル』を始めちゃいました(笑)。

『神クズ☆アイドル』は所謂ファンタジー漫画のイメージの対極にある作品ですよね。

そうなんですよ、だから載せていただけて感謝しています。「ZERO-SUM」は長期連載のファンタジー作品がたくさん掲載されている印象が強いので「まだ20周年か」という感じですね。その一部に載せていただいて本当にありがたいです。

――お二人は20年前は何をされていましたか?

20年前は小学生でした。親戚のお兄さんが『最遊記』や『Landreaall』などを持っていたので、借りて読んでいましたね。「ZERO-SUM」はいろんなジャンルの作品が載っていて、本当に不思議な雑誌だったんですよね。

私は当時、青年誌で漫画を描いていたのですが、その雑誌が休刊になってしまって。その数日後にたまたま「ZERO-SUM」の編集さんと会って、それで青年誌休刊の翌月から描かせてもらうことになって、インターバルなしで次の作品を描くという感じでした。

えー! 凄いですね。

その時「ZERO-SUM」には運命を感じましたね。食いっぱぐれなくて良かったなと(笑)。

そんなに滑らかに移行できることもあるんですね。

今考えると可笑しな話ですよね。もともと同人誌で描いていた作品だったので、既にストーリーはできていたんです。だから当時の担当編集さんも準備期間なしで連載できると思ったのでしょうけど…。今さらですが休めば良かったなって(笑)。

絶対休んだ方が良いですよ(笑)。

『Landreaall』がこんな長期連載になることがわかっていたら、休みをもらっていたのになぁ。その当時は、青年誌での最終回と「ZERO-SUM」で連載する第1話目を並行して描いたんです。

「Landreaall」第1巻より

そうなんですか! 私には絶対できない…。

肘樹先生は一つの作品に集中して描かれるタイプですか?

そうですね。目の前の締め切りを凌いでいる感じなので、先々のネタの蓄えがあまりないんですよ。「次のことは先々考えようかなぁ」みたいな(笑)。

それでは月ごとに内容を考えていらっしゃるのですか?

そんな感じです。打ち合わせの時に一応全体のプロットを決めるのですが段々反れていくので、結局あまり意味がなくて。私も担当編集さんも前回の打ち合わせの内容を忘れてしまっていたりして、毎回、記憶を取り戻すところから始まるんです(笑)。

わかります(笑)。

本当によろしくないですよね。だから最近メモを取ることを覚えたのですけど…。

私は「忘れたらそのネタはそこまでだった」という感じで割り切っていますよ。打ち合わせでどんなに盛り上がっても、記憶に残っているモノが全てなので。もう「それが一番良いモノ」だと思って信じて描くしかないかなって(笑)。

なんて良い言葉なんだ…!

忘れてしまったことでも、良い案でしたらいずれまた降りてきますし。

たしかにそうですよね。「そういえばこんなの描きたかった気がする!」と思い出しながら。

そうそう!

ファンタジー作品ですと伏線は必須かと思いますが、おがき先生は先のことは見据えて描かれていらっしゃいますか?

私はネタがなくなるのが怖いので、たくさん下準備をしてから描いていますね。そうしないと不安になってしまうんですよ。だからたくさん温めています。

凄いなぁ…。

でも『神クズ☆アイドル』のように現代ものの作品は、時代に合わせたネタが必要になるので、先々を見据えてというのも難しいですよね。逆に肘樹先生は、今の社会的な事柄など反映されたりするのですか?

そのアイドルファンたちがどういう盛り上がりをしているかなどを自分で分析して、かみ砕いてネタにしている感じですね。でも作中のアイドルオタクが発している言葉は、最近面白いなと思ったネタを使ったりしています。

「神クズ☆アイドル」第3巻より

そうですよね、でもそれが凄く面白いんですよ。アイドルファンたちがイキイキしている様子が大好きです!

ありがたいです…! 私自身がアイドルオタクというよりは、アイドルオタクのオタクという感じなんです。だからライブに行っても、周りのお客さんの行動などを観察してしまって。

だから作中のファンの人たちも面白くて、リアリティがあるのですね。

オタクをしていて嫌なこともあると思うんですよ。でもなるべく良いところだけを集めたオタクの姿を見せたいという意識でアイドルオタクたちを描いています。

本当に『神クズ☆アイドル』は光の漫画ですよね!

そう言っていただけるとありがたいです。

私の以前の担当編集さんが、心の底からのアイドルオタクだったんですよ。だから親近感もあって。その担当編集さんも『神クズ☆アイドル』を推していました(笑)。

担当編集さんから「編集部や先生方にも読んでもらってるよ」と時々教えてもらえるのですが、とても嬉しいです。

肘樹先生は『神クズ☆アイドル』を描かれる際に、読者層を意識されているのですか?

基本的にはそんなに気にしていなくて、自分で描きたいように描いてるという感じですかね。でもギャグ漫画なので読者の方々に「このネタわかってもらえたかな」「笑ってもらえたかな」と心配にはなります。

そうですよね。私は「私の頭の中にいる読者さん」みたいなのがあるんですよ。その自分の中にいる読者さんを想定して描くことが多いですね。「どんな風に読んでくれているかな」と丹念に妄想しています。

――例えばどのようなイメージ読者さんがいるのでしょうか?

「仕事から帰宅して、お風呂からあがったあとにビールを飲みながら読むのかな」とか(笑)。

部屋のどこに『Landreaall』のコミックスを置いているかとかもですか?

そうそう! 枕元に積んでいる人や、冒頭10巻くらいまでは段ボールの中に入っている人、お気に入りの本棚にしまってる人…など。

凄く細かい!!

そうなんです、私は読者さんを想像しないと漫画が描けなくて(笑)。

――連載中に特に大変だったことはありますか?

私は5年くらいしか描いていないからな…。

でも実際のところ、その5年が何回も続いている感じなんですよ。『Landreaall』はもう少しで連載20周年になりますが、長年をかけて同じ作品を描くということは、最初の5年を何度も繰り返しているようなものなのかなって…。

「月刊コミックZERO-SUM 2020年4月号」巻頭イラスト

なるほど、この5年を4周するってことか(笑)。私なんか今でも「ZERO-SUM」の新人作家みたいな気持ちでいますけど、もう連載5年になるんですよね…(笑)。

そう、まさしくその感情なんです! ずっと同じペースで描き続けているので、何も変わらないんですよ。それにメインのアシスタントさんもずっと変わらず付き合ってくれているので、一緒にキャリアを重ねていくだけというか(笑)。

――『Landreaall』はアカデミー騎士団編やダンジョン編など、各編ごとにストーリーが綺麗にまとまっている印象ですが、意識されているのでしょうか?

「Landreaall」第35巻より

私はいつ打ち切られてもおかしくないと常に思っているので、いつ告知されても良いように心の準備をしています。どこで最終回になってもすっきり終わるイメージで作っていますね。

キリが良いところで終われるように、ということですよね。

そうです。

――おがき先生は連載当初の頃を覚えていらっしゃいますか?

「ZERO-SUM」以前に連載していた青年誌も月刊誌だったので、全く生活に変化がなかったんですよね。発売日も「ZERO-SUM」と同じくらいでしたし。でも少女漫画雑誌ということは意識しました。連載が決まった時に、自分の中に少女漫画という概念がなかったので困ってしまって。

私も「ZERO-SUM」を読んで「私の漫画って浮いてるな…」と毎月思ってます。

私も! それで20年も経っちゃいました(笑)。創刊当初からいらっしゃる先生は、もう生き神様みたいな存在ですよね。私なんかは、村の長老みたいな感じですけど(笑)。「ZERO-SUM」は時代の変化に合わせてどんどん変化している雑誌なのに『Landreaall』も載せていただけて、ありがたいことです。

――肘樹先生は連載が始まった時のご心境はいかがでしたか?

「神クズ☆アイドル」第1巻より

私はそれまで漫画を描いたことがなかったので、毎月漫画を描くってことがこんなに大変なんだと知りました。そもそも毎月迫ってくる締め切りにも苦労しましたし、「ZERO-SUM」を読んだときに「私、絵が下手だな」と実感させられましたね。

漫画を描かれること自体初めてだったんですね!

そうなんです。「ZERO-SUM」を読んだ親からも「あんた以外の作家さん、みんな絵が上手いけど大丈夫なの!?」と言われて「この雑誌、私以外みんな絵が上手いんだよ」って言い返しましたけど(笑)。でも『Landreaall』をはじめ、「ZERO-SUM」には好きな漫画が多かったので、そういった作品と一緒に掲載してもらえることに毎月感動していましたね。

肘樹先生はどのような経緯で漫画家になられたのですか?

少し複雑な経緯がありまして…(笑)。

気になる!

私の好きなアプリゲームのキャラクターが、ゲーム内で蔑ろにされた時があったんですよ。それで「絶対に許せない!」というブログを書いていたら、今の担当編集さんがそのブログを読んでくださったみたいで「キャラクターのためにこんなに怒れるなんて面白い女」ってことでスカウトされました。

どういうこと(笑)。

「キャラクターをこんなに大切に考えられるのなら、面白いキャラクターなども考えられるでしょう」という理由で声をかけてくださったみたいです。でもその頃の私は、同人誌を1年に1冊作るだけでもヒィヒィしていたので「なんでこんな人間に漫画を描かせるんだろう…」と不思議に思ったのですけど。

そんなことが(笑)。

最終的に「こんなに色々な作品が載っている雑誌ならチャレンジしてみようかな」と思ったのが経緯ですね。だから私の場合、完全に裏口入学のような感じで漫画家になってしまったので、今まさに苦労しています。未だに漫画家の実感もないまま、ずっと不思議に思っています。

担当編集さんの見る目が凄いですね。

そう、担当編集さんが凄いんですよ!

でもきちんと毎月連載ができるということは、肘樹先生にも相当責任感があるということですよね。

いやぁ、そうかな…。ちなみに、おがき先生はスケジュールの管理はどうされていますか? 私は毎月「もうだめだぁ」と言っているので教えてほしくて…!

今の担当さんに変わる時がスケジュールを正しくする唯一のチャンスだったんですよね。締め切りをきちんと守れるようになろうと思っていたのに。結局ダメだったんですよー…(笑)。

(笑)。

でも「締め切りに間に合わない」イコール「雑誌に載らない」ではないので!

たしかに(笑)。私も「今月が一番やばかったです! 」と毎月言ってる気がします。それが5年間続いているんですよ(笑)。

それが20年続くんですよ…(笑)。

どうしたらいいんでしょうね…。

――締め切りも大変ですが、お休みの確保も大変ではないですか?

私は、頭では常にネタを考えつつ、作画に関しては仕事をする日としない日を明確に分けていますね。仕事をしないと決めた日は、全くしない感じです。

私は「もう描くしかないか」と観念するギリギリまで何もしないです。それまでは呆然としている感じですね(笑)。

でも呆然としながらも、キャラクターやストーリーなど考えたりしちゃいますよね。

そうなんですよ。「今回あれをやらなきゃいけないってことは、こうしなきゃいけないからー…」と皿洗いをしながらブツブツ考えてます。

やはり頭の中まで休む日というのがなかなかないんですよね。

たしかに。私の場合は「今日はお休み」というのはあまりなくて、ずっと家の中にいるからか気分を切り替えられないんですよね。先日、担当編集さんに「お休みの日を決めて休んだ方が良いかもしれないですね」と言われて、なるほどねと思ったくらいですから(笑)。おがき先生は仕事をしないと決めた日は何をされるのですか?

ご時世的に遊びに行くことはできないですが、散歩や買い物など極力家からは出るようにしています。逆に仕事は家でないと絶対にできないタイプなんですよね。時々カフェで仕事をされている作家さんがいらっしゃいますが、私には不向きでした。

雑音が気になってしまうのですかね?

恐らく。ネームを切る際は音楽すら聴かないですね。でも作画作業になるとテレビやYouTube、音楽をかけたりしています。何を描くか決めてから作画に入るタイプなので、作画では「どう描こうかな?」と迷ったりせず、手だけ動かして頭は使わない感じですね。

私も同じです。作画に入れば歌いながらでも描けるのですが、ネームやプロットの段階では基本的に無音ですね。たまに1曲だけ延々とリピートしたりもしますが。

肘樹先生は気分転換に外出されたりしますか?

最近は健康のために散歩をするようにしていますが、家が山の中なので出歩いても何もないんですよ。買い物に行くにも数キロ歩く覚悟が必要なので、ずっと家に籠ってしまうんです。

「月刊コミックZERO-SUM 2020年10月号」センターイラスト

――家に籠って何時くらいまで作業されるのですか?

作家さんで「こんなに遅い時間まで描いているんだ」という方がたまにいらっしゃいますよね(笑)。

私だ! 健康的な時間に寝るつもりではいるのですが、いつの間にか寝る時間がメチャメチャになってしまって。「描ける時に描いておこう」精神なので、描ける時は深夜の3~4時くらいまで描きますけど、ダメな日は遅くとも1時には寝るようにしていますね。

体力が続くまでやってしまう感じ?

そうです。描く気力を起こすまでが長いので、できる時に一気にやってしまおうと(笑)。おがき先生はモチベーションをどのように保たれていますか?

モチベーションを保つのがとても難しくて、結論から言うと保っていないです(笑)。

そうなんですね(笑)。私は好きなコマから描いてます。パッと見て「ここ描きたいかも」と決めたところから毎回描き始めて、でも、そうすると後で辛くなるんですよ。それに何も描いていないページがあったり、顔だけ描いたコマがあったり…、とページごとの進捗もバラバラになる原因ですし。

肘樹先生は好きなコマから描いていかれるのですね!

そうなんですよ。後々追い詰められてくると「あ、このページは下書きもきちんと入っているし描きやすそう!」と自分へのご褒美のような感じでコマを埋めていくので、最後の最後は下書きが入っていなくて辛くなるんです。

描きたいところから描くと、最後に描きたくないコマが残りますからね。

「最終的にどこもやだなぁ…」みたいな。おがき先生はどこから描かれますか?

私は楽なコマを後に残しますね。どちらかと言うと大変な場面を描くのが一番楽しいんですよ。

凄い、尊敬します!

作画コストのかかる場面を最後に残すと、本当に大変なことになってしまうんです。だから最後は力尽きる寸前の状態でも描けるところを残すようにしています。そう考えると、漫画の連載はマラソンのような感じですよね。それでも20年近く続けられているのは、読者の方々からいただける応援のおかげなのですが。

「月刊コミックZERO-SUM 2021年8月号」センターイラスト

そうですよね、それしかないです!

本当に読者の方々が優しいんですよ。

私も「何でそんなに良くしてくれるの!? 」といつも思っています。

今の時代ですと、Twitterを通して直接感想をいただいたりしますよね。ファンレターも嬉しいですが。

そうですよね。

応援の気持ちをTwitterなどで発信してくださる時などに、私は読者の方々の存在を強く感じます。その応援に伴い先ほどの「私の中の読者さん像」もどんどん明確になっていって、本当にありがたいです。

様々なタイプの読者さんがいらっしゃいますから、作品に対する解釈もそれぞれですよね。

私は読者の方々に対して「こういう風に楽しんでほしい」という理想は特になく、読んでくれた方の各々の解釈の中に『Landreaall』という作品があれば良いと思っています。各々の解釈で楽しんでいただいて、それで「面白かった」と言っていただけたらラッキーだなと。

そうですよね。『神クズ☆アイドル』も直接Twitterで「応援しているよ」と発信してくださる方が多いです。以前サイン会を開いていただいた時に、「自分もアイドルが好きで共感した」「このペンライトが特に好きで!」など、作中のアイドルオタクのように親身に応援してくださって。だから「応援して下さる読者の方々によって、私自身が漫画のような素敵な人生を送らせていただいているな」といつも感動しています。

「神クズ☆アイドル」第5巻より

読者一人一人の応援が活力になるんですよね。

そうなんです。漫画を読んでくれて「面白かった」とわざわざ発信してくれるのはありがたいです。やはり作家にとって、見える形で発信してくださると凄く励みになりますよね。

たしかに! 『神クズ☆アイドル』は本当に面白くて、推したくなる作品なのですが、影響を受けた作品などあったりしますか?

幼少期はギャグ漫画や四コマ漫画ばかり読んでいたので、特に「この作品から影響を受けた!」というのがあまりないんですよ。私は何を想って『神クズ☆アイドル』を描いているんだろうな…(笑)。

それって才能でしかないですよ!

そうなのかなぁ…。良いように聞こえますが、現実では毎月その場を凌ぎ続けている感じなんです。

――アイドルオタクの姿がリアルですが、どのように取材をされているのでしょうか?

ほとんどしないです。明確に好きなアイドルがいなくて…。

そうなんですか!? ではイメージだけで描かれている感じですか?

アイドルファンがネットで書いたライブのブログを参考にすることが多いですね。ライブ当日に何時に駅を出発して、着替える前に何を食べて、何時に友達と合流して…みたいなことが書かれていて。

行動の記録が細かくて面白い(笑)。

他にもライブのセットリストや感想などが事細かに記録されていて、そういったブログを読んでいる方が、ライブに行って取材するよりも楽しいんですよね。もちろんライブDVDなども購入して観ますが、基本的にジャンル問わずブログを参考にすることが多いです。

なるほど、だからリアリティがあるのか! ファンのレポートを読むと、自分もその舞台に行ったかのような感覚になって面白いですよね。

そうなんです。それと私はライブ映像に収録されていない部分も好きで。実際にライブや舞台を観に行っても、「隣の席の子がいきなり泣き出した」など、ファンの行動に注目してしまうんです。

ファン層が濃いほど、そのファンの方たちの行動や反応は興味深いですよね。それに、そのファンの方からしたら応援しているアイドルってとても輝いて見えているから、そこがまた良いんですよね。

そうなんです! おがき先生は影響を受けた作品などありますか?

私は子供の頃から海外のファンタジー小説が凄く好きでした。だから影響を受けているとしたらファンタジー小説と、あとはゲームですかね。

どんなゲームをされますか?

RPG、シミュレーション、アクションですね。『ファイアーエムブレム』『ドラゴンクエスト』『ファイナルファンタジー』『ゼルダの伝説』シリーズは一通りやっています。ゲームがものすごく好きなので、その影響は強いかな。

ファンタジー系のゲームが多かったわけですね。海外のファンタジー小説はどのような作品を読まれていましたか?

女性が主人公の作品が好きでしたね。主人公が女性の魔法使いや女剣士など、好んで読んでいました。

「月刊コミックZERO-SUM 2019年5月号」センターイラスト

――そういった類のファンタジー映画も観られますか?

映画は趣味という感じで観ています。影響を受けたいのはやまやまなのですが、娯楽として楽しんでしまうのでなかなか難しいかなぁ…。

私は映画館でアルバイトをしていたわりに、あまり映画は観ないんですよね。3か月に1本程度で、海外のヒューマンドラマ系の作品を観ます。綺麗に話が収まるのが好きなので。

私はアメコミの映画が好きですね。お仕事もさせていただいたこともあって、嬉しかったな。それに通っていた大学が映像学科でしたので、当時は勉強としても様々なジャンルの映画を観ていました。

『Landreaall』はアクションシーンも格好良いのですが、そういった映像などの影響もあるのでしょうか?

一時期カンフー映画にハマっていたことがあって、もしかしたらベースはそこから来ているのかもしれません。

「Landreaall」第34巻、第36巻より

とても映像的で、贅沢ですよね。

ありがとうございます! アクションシーンは描くのが難しくて、頭の中では何が起こっているのかわかっていても、漫画に起こすのにとても苦労してしまうんですよ。

自分の中で考えたことを漫画で表現するのは本当に難しいですよね。

そうなんです。「漫画家にとってそれが一番大事なことなのに」とは思うのですが、なかなか上手くいかないですよね。

私もダンスシーンが特に難しく感じています。まぁ、実際には他も含めて全部難しいんですけど(笑)。

「神クズ☆アイドル」第2巻より

やはり動きのあるシーンは難しいですよね。

アイドルのライブを見ていても「わぁ格好良い」とは思うのですが、どういった動きをしているのか全くわからないんですよね。さらに絵にするとなると、余計に意味不明で…。

そういうシーンは一時停止して観たり研究したりして描かれる感じですか?

そうですね。あとは公式で公開される舞台レポートに写真が載っているので、シーンの切り抜き方など参考にさせていただいています。

――漫画的に格好良く魅せるために意識していることはありますか?

私の書いている漫画は漫画的に格好良いのかな…。全く上手く描けている気がしなくて、いつも手ごたえがないんですよね(笑)。おがき先生はどうされていますか?

やはり「過剰に演出していく」ことが大切なのかなと思っています。格好良さをどんどん盛って(笑)。

たしかに、恥ずかしがらずに盛ることは大切ですよね。

「月刊コミックZERO-SUM 2021年9月号」センターイラスト

そうなんです、でも漫画を20年描いていても未だに恥ずかしがらずに描くのは難しくて。

いや、実際漫画を描いて読んでもらうことって恥ずかしいですよ! 格好良いモノローグとか照れちゃって描けないし(笑)。

描けない!(笑)

でも漫画を描くには恥ずかしがっていたらいけないんでしょうね…。

長年の課題ですよね。「ZERO-SUM」で生き残るには、きっと格好良いシーンを描けるようにしないといけないんですよ!

「Landreaall」第26巻より

あああぁぁ、格好良さを恥ずかしがらないってことですよね…!

――まだまだお話足りないと思いますが、最後にいつも応援してくれる読者の皆さんにメッセージをお願いします。

長い間『Landreaall』を応援してくださりありがとうございます! まだまだ描きたいこともありますので、末永くお付き合いいただけると嬉しいです。これからもよろしくお願いします!

『神クズ☆アイドル』の連載が続いているのは、本当にいつも読んでくださる読者の方々のおかげだと思っております。これからもあまり深いことを考えずに、楽しんでもらえたら嬉しいです! もう、おがき先生とお話しできたことが嬉しくて、舞い上がってしまいました…。

こちらこそ普通に『神クズ☆アイドル』のファンなので、色々と聞いてしまいすみません…! 本日はありがとうございました!

ありがとうございました!!

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公開日:2022.5.13

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